【通信34号】−1 75歳以上を切り離した後期高齢者医療制度

2008年8月10日 18時08分 | カテゴリー: 江東・生活者ネットワークREPORT

超高齢社会を支える医療・福祉を考える

 4月から始まった後期高齢者医療制度(*1)は75歳以上の後期高齢者を強制的に加入させる制度だ(65歳上の一定の障がいのある方は選択制)。政府は批判の嵐の中、低所得者への追加支援策を講じ、「終末期相談支援料」制度を凍結、保険料の口座振替を可能にするなど、次々に目先の改善策を打ち出している。しかし、年齢で線引きし医療リスクの高い世代を集めた制度が、安心して老いるための支え合いのしくみとして機能するか疑問だ。

75歳以上を分断する医療費抑制の制度
 超高齢社会に膨張する高齢者の医療費を、抑制管理しやすくするために現役世代と切り離すという世界でも類のない医療制度が「後期高齢者医療制度」だ。
 75歳以上を家族の扶養からも切り離し、命の綱の年金から保険料を天引き。これまで75歳以上は対象外だった保険料滞納による保険証取上げという究極の制裁措置も導入、その結果、必要な受診すら抑制し、重症化につながりかねないなど問題が指摘されている。何よりも問題なのは、当事者である後期高齢者に対し、納得のいく説明をせず、置き去りにしていることだ。

持続可能性に疑義、財源不足をどうするのか
 政府は政治・社会問題化した各方面からの批判の嵐の中で低所得者への追加支援策など打ち出したが、問題の根幹は制度そのもの「財源の仕組み」にある。2年ごとに保険料を見直すことになっているが、財源の割合は「後期高齢者」の保険料が1割、その他の健康保険からの支援金が4割、国や都道府県などの公費が5割と決まっている。
 今後、急速に進む高齢化で医療費の増大は必至、この制度が向かう方向は医療給付の抑制による受けられる医療の質の低下か、保険料の値上げしかない。財源の確保がなければ、制度そのものの破綻は目に見えている。超高齢化社会で、真に医療を必要としている人への必要な医療給付を後退させないために、財源不足をどう確保するのか、制度の根幹からの見直しが必要だ。

医療は社会保障、重い自治体の責任
 運営主体は都内23区と39市町村の行政・議会の代表で構成される広域連合。保険者として保険料の算定など基本的な内容を決定する。
 広域化することによって、被保険者の実態把握は難しくなり、当事者からの声は届きにくいなど、制度改善につなげる市民の意見反映のしくみは形だけのものとなる。責任の所在があいまいで、これでは基礎自治体は「保険料取り立て・給付抑制」の国の出先機関になりかねない。
 医療は公共が担うべき社会保障であり、安心で快適な暮らしを支える福祉サービスの要素が強い。万が一の場合独自に保険料減免などの措置を講ずることができるよう制度改善をするなど、実態把握が可能な身近な基礎自治体の役割は重要だ。

私たちがつくる高齢者が安心して生きる社会
 後期高齢者医療制度の柱のひとつで、最期に人工呼吸器を付けるかなどの対応を患者と医師の間で文書に残す「終末期相談支援料」制度が凍結された。このほか、「かかりつけ医制度」や「包括医療制度」(*2)など、いずれも、高齢者が自由に必要な医療を受ける権利を阻害する方向になりかねないなど、問題は山積みだ。
 高齢化が進む中、国民が自分の最期について考え、死を準備するきっかけを持つことは大切であり、その方法を社会で考えていかなければならない。
 江東ネットは、自らの老後の質を確保するための制度とともに、地域での支え合いのしくみや、医療と福祉、介護のあり方、誰もがいずれ迎える「死」を、終末期をどう支え「生きる」か、考えたい。(福祉部会)

(*1)「長寿」医療制度と言い換えているが、ここではあえて「後期高齢者」を使用する
(*2)いくら医療行為を受けても、一定額以上の診療報酬は支払われず、医療機関が不採算となれば、受けられる医療が制限される

*写真・・・高齢者のデイサービスでの機能訓練風景。生活の質の向上には、医療と介護・福祉の連携とともに、生きがいを育てる仕組みも必要だ