住み慣れた地域で老いることが可能な国

2009年2月1日 23時24分 | カテゴリー: トピックス

〜オーストラリアの福祉制度〜

 日本の介護保険制度の目的は、要介護者が、その能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスを提供し、保健や医療の向上、福祉の増進を図ることとしている。しかし、高齢者の生活上の困難や課題は、介護問題のみではなく、心身の機能の低下による健康・経済問題、生きがいの喪失、介護予防問題などと多岐にわたることが多い。高齢者にとっては、「こころとからだ」だけでなく、支える人や地域など、とりまく環境との関係も大事な問題である。
国民が納得する中福祉の確立にむけて国をあげて挑戦しているオーストラリア・クイーンズランド州の事例を見てきた。
オーストラリア型は中福祉、中負担 
 オーストラリアは社会保障費、医療保険、年金などの財源すべてを税金でまかなっている。2006年の統計では、65歳以上の高齢者の総人口に占める比率は13%で21年には18%、日本の20年に29.2%に比べれば高齢者人口の伸びは緩やかである。
 オーストラリアでも、1950年代ごろまでは高齢者の介護は家族の責任とされ、生活困窮高齢者に対しての公的扶助だけだった。60年代には長期ケアを必要とする人々にナーシングホーム(重度高齢者のための施設)の利用を連邦政府が決め、介護施設での介護が一般的となり、必要に応じて誰でも入所できるようになった。それにともない高齢者福祉の国家予算も膨らんでいった。この膨大化した予算と入所介護施設の不足が大きな問題となり、抜本的な高齢者ケアのあり方が政府や関係者の間で本格的に検討されることとなった。「福祉をとるか経済をとるか」という二者択一ではなく、福祉の切り下げをせずに、財政負担を軽減する「中福祉・中負担」の確立をめざした。
施設から地域・在宅へ住み慣れた地域で老いる
 施設に入所して介護を受けるよりも、できるだけ自分の家に住み続け、地域社会の中で生活する。自宅で必要な在宅サービスを受けることがこれまでの生活を維持し高齢者の人権という観点から好ましいとして改革はすすめられた。これが、85年施行のHACC制度創設である。国の方針を受けて、「住みなれた地域で老いる(Aging in Place)」を基本とすることが州でも提唱され、地域、在宅ケアへの転換を図り、介護予防に力をいれて施設への不適切な入所を防止している。
レスパイトケア在宅介護者への支援強化 
 現在のオーストラリアの高齢者ケアシステムは、97年からの高齢者ケア構造改革により、施設ケア、地域ケア、レスパイトケアの三本柱となっている。連邦政府のレスパイトケアは、介護者だけでなくその介護者も援助の対象であるという認識で、在宅介護者の支援強化のため全国規模でサービスプログラムの拡充が行われている。サービスは、①自宅を訪問して援助する②要介護者がデイケアへ来所する③施設へ入所するという3つの方法から選択できる。利用時間は、施設対応レベルの重度の地域ケアの利用者は、年間63日のほかに3週間の追加利用が可能。この制度はHACCのサービス内容の一つで、在宅介護者の支援と同時に施設入所を先送りできることにもなる。注目すべき点は、レスパイトケアが制度として位置づいていることである。
オーストとラリア日本は社会保障制度の違いがあることから、日本の介護保険制度と比較することには慎重であるべきだが、制度ができて9年目、大事なことは高齢者の自立と自己決定を援助し、生活の質を向上させることであり、部分的な改正にとどまることではないと考える。何より二者択一の方法ではなく人権重視の政策を見た思いを強くした。(江東・生活者ネット通信36号)